魔法の1週間(5)最終章

魔法の1週間(5)最終章

退院

翌朝、由紀はいつもより早く目がさめた。入院してからの由紀に何かの変化が起きていた。由紀は今で何もなかったように自分の身なりを替えようとした。パジャマのズボンを脱ぎ、紙おむつを自分で外すと引き出しからショーツを出して穿く。約1週間ぶりのショーツの感触に懐かしさを覚える。パジャマのズボンをはくと由紀はベッドから立ち去り、病院内を歩いてみる。少し歩いてみると簡単にトイレの案内板が目にとまる。由紀はトイレに入るといつもの日常生活のように毎朝の用を足していた。
その廊下を歩く姿を看護婦がナースステーションから見つめていた。
「あら、木村由紀さんが歩いているわ」
だが、由紀がトイレに入ることを確認するとそれ以上は近付かず様子を見ていた。トイレから由紀が出てくると看護婦がすぐに近寄って気遣う。
「木村由紀さん、どうしましたか。おむつが汚れてしまいましたか」
「いいえ、トイレで用を足しました」
「そう、おむつは汚れていないのね」
「ええ、おむつは自分で外しました」
「あら、本当に?木村さんは自分でトイレで用を足すことができるようになったのね。記憶も戻ったの?あなたのお名前は」
「木村由紀ですけど」
「そう、よかった先生が来たらすぐに診察してもらいましょうね」
「ここは病院ですか?家に帰りたいのですけど」
「診察をしてもらってからです。自分のベッドは分かりますか。もうすこし待っていてくださいね」
看護婦は由紀に寄り添って病室に行き自分のベッドまで行けたことを確認すると婦長への報告に走って行った。

午前の回診で精神科の医師は原因はわからないが由紀の赤ちゃん返りの終わりと記憶が戻ったことを確認した。さらに肉親との確認のため、午後に母親と会話をしてもらい問題なければ退院とすることにした。電話で連絡をもらった由紀の母親は病院の午後のお見舞いの時間開始とともに病院へと駆けつけた。
「由紀、記憶が戻ったの」
「ええ、私はなぜこの病院にいるの」
「なぜって、急におかしくなってしまって救急車で病院へ来たのよ。そこは覚えていないの」
「ええ、高校の中間試験が終わって家へ帰ったところまでは覚えているけど」
「そう、でもよかったわ。記憶喪失の上に由紀は本当に大変だったのよ」
「大変って、どんな風に」
「覚えていないのらいいわ。退院して落ち着いたら話してあげる。でも本当によかったわ。これで退院もできるし、また高校への通学できるわね」

「木村さん、もう問題ないと思いますが医学的な精神の検査を今一度しましょう。それで問題なければ明日の午後に退院して結構ですよ」
「先生、ありがとうございます。学校の先生にも友達の美恵にも連絡しておきます。そうそうそれと着替えの下着と洋服がなかったわね。それも持ってくるわね、由紀」
「では、木村さん、これからもう一度精神科の検査をしますので、お母さんは一度帰宅しても結構ですよ。明日の午後に退院できるかどうかは今日の夕方までにご自宅に連絡しますので」
「はい、でも退院のつもりで明日着る服を持ってきます」

精神科の診察室で由紀は基本的な精神の検査を再度受けた。結果はまったく問題がなかったが、医師としてはその原因がわからないとなかなか診察を終えることができない。
「由紀さん、赤ちゃんはどう思いますか」
急に質問の内容が変わり由紀は一瞬戸惑うが、正直に答えていく。
「赤チャンですか。かわいいですね」
「かわいいだけですか」
「ええ、将来は自分も母親になって赤ちゃんを育てたいと思います」
由紀は正直な大人としての模範解答をした。医師はいろいろ由紀の赤ちゃん返りの原因を探る質問をしてきたが、兄弟は居ないためなかなか症例としては過去に当てはまるものがない。ましてや16歳という年齢での赤ちゃん返りも聞いたことがない。由紀の父親が出張で不在が多いと聞いているが父親を恋しがっているわけでもないので理由の候補から外す。やはり、初めての高校の中間試験での疲労が溜まってだけの現象なのだろうか。意志としては原因がわからないままでは再発防止に役立てないと思いつつもカルテにその旨を記述すると、明日の午後に退院とサインをする。
「木村さん、今回の記憶喪失の原因はやはり試験勉強での疲労とストレスによるものと思います。今後は体調に注意して勉強してください」
医師はあえて由紀の赤ちゃん返りの症状については説明をしなかった。それは由紀にそのことを説明するとまたその症状がぶり返したり、精神が異常に高ぶる可能性もあるからだ。赤ちゃん返りの症状については母親とは十分話をしてあるので、本人には記憶喪失だけとして退院の連絡をした。
「先生、ありがとうございました。お世話になりました」
「ちょっと早いかな、明日の午後に退院です。おめでとう」

「由紀、病院から電話で明日の午後に退院ですって。おめでとう」
「ありがとう」
「明日の午前中に退院手続きを済ますから、それが済んだら退院しましょう。お昼は何かおいしいものを御馳走してあげるから。何がいい?」
「そうね、やっぱり病院に居ると生物が食べられないからお寿司がいいな。回転寿司でいいわよ」
「分かったわよ。お寿司ね、そうしましょう」
退院が決まった前日の夕方ににママは再度病院を訪れ、由紀との病院での最後の会話を交わした。病室の引き出しの中や、身の回りを整理して、簡単な拭き掃除までしていくママを由紀はベッドで見つめている。ママは引き出しの最下段にしまってあった紙おむつを見つけると、何もなかったようにまた引き出しを閉じた。この紙おむつもすぐに看護婦に返したい気分だが、由紀の前でおむつを見せるのは心配だった。だが、勇気をもっておむつを手に取ってナースステーションに行こうとする。
「由紀、これは返してくるね」
「後で看護婦さんがきれいにしてくれると思うけど」
「そうね、でも、もういらないでしょう。由紀は入院している最中に記憶喪失で必要だったけどもういらないから」
由紀は少し悲しそうな顔付きをするが、ママに心配をかけないように由紀は返事をする。
「へーいやだ、私それを使っていたの」
由紀は昨日の朝に自分でおむつを外してショーツに着替えたのを覚えている。だが恥ずかしいのでそのことには触れたくなかった。
「由紀は記憶喪失だったから何も覚えていなくていいのよ。何もなかったのだから」
ママはその他の引き出しにあった涎かけやおしゃぶり、哺乳瓶などをバッグに由紀に分からないいように詰めるといそいそとナースステーションへ向かう。
「すぐに帰ってくるからね」
ママは由紀の赤ちゃん返りのために使ったいろいろな物はすべて片づけた。あとは携帯電話に残されている由紀の赤ちゃん返りした写真だけだ。入院中は医師の勧めもあり、由紀の写真を撮って赤ちゃんになっている由紀の写真を本人に見せて、由紀は赤ちゃんですということを証明するために何枚かの写真を取っていた。おむつを当てた由紀の姿、そしてむつ替えの場面、涎かけをして哺乳瓶でミルクを飲んでいるところ、そしておしゃぶりを咥えている場面などだ。だが、それを街の写真屋さんで印刷してもら勇気はなく、かといって自宅のプリンタで写真として印刷することはママにはやり方が分からずできなかった。でもママは品物は全部バッグに収めたし、写真は携帯の中にある。そして携帯はこのバッグの底にある。

「由紀、お待たせ。明日また退院で来るからね。もう少しだからね」
「ええ、迷惑かけました」
「何言ってるのよ。あ、そうそう、私の携帯はこの辺にあったかしらね。あ、あった、あった」
「病院では携帯は使用禁止よ、ママ」
「そうね、でも電話はしないから大丈夫よ。それで由紀、撮影した写真を削除するのはどうやってやるの?試しに撮ったごみみたいな写真が増えちゃったので削除したいの。やり方を教えてくれる」
「ええ、いいわよ。同じ携帯の機種にしておいてよかったわね。そのゴミの写真をまず開いて、左下のメニューから削除を選ぶだけよ。ちょっと見せてくれる」
「いいのよ、自分でやってみる」
ママは本人の前で由紀の赤ちゃん返りした写真を広げて確認をして削除していた。
「よし完了。じゃ、また明日くるね。退院ですものね」
「じゃ、ばいばい」

退院の日の午後、由紀とママは同じ病室の方とナースステーションに挨拶をすると病院から出た。今日も太陽がまぶしい1日だ。駅に近い回転すし屋でお昼をとり、自宅まで二人で歩いていく。
「由紀、勉強をがんばるのはいいけど、体調は壊さないようにしてね」
「そうね、少し勉強しすぎたかな」
「成績が上がるといいわね。でも体調は気を付けてね。そして体調がおかしかったらすぐに話してよ。あんな風になるのはもうごめんよ」
「あんな風って?」
「記憶喪失よ。何も覚えていない1週間だったけど、大丈夫よ。もう大丈夫だからね」
由紀にはこの1週間の記憶がない。突然記憶喪失になった魔法のような1週間だった。でもときにはまた魔法をかけられたいな、なんて思いながらママと二人自宅への帰り道を歩いて行った。

(終わり)

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魔法の1週間(4)

魔法の1週間(4)

赤ちゃん返り

次の日の午後、ママはいつものように由紀の見舞いに行った。由紀はママを待ちわびていたように顔を見るなりこう言った。
「ママ。ミルク」
「由紀は赤ちゃんなのね、おむつは大丈夫?ミルクね、ほら見て」
ママは買ってきた哺乳瓶を由紀に見せると由紀はようやくほほ笑んだ。だが、言葉は出てこない。ママはおしゃぶりを由紀の口に入れてあげると由紀は素直に口を開けておしゃぶりを吸う。
「哺乳瓶にミルクを入れてくるから。ちょっと待っててね」
ママは産婦人科の看護婦に話すと精神科の医師から連絡があったのだろう、看護婦はすぐに哺乳瓶にミルクを用意してくれた。今度からは粉末ミルクで電気ポットで自分で作ってあげようとも思うが、それは衛生上病院内では禁止されている。ママは由紀の病室にミルクが冷めないうちにと急ぎで向かう。
由紀はママが見舞いに来てくれたことからママにおむつを替えてもらうために病室を出て行った後、簡易トイレに座った。「私は赤ちゃん、おしっこをお漏らしするの。おむつの中にお漏らしするの」
由紀は声にならない声で自分に言い聞かせながら踏ん張ってみる。やがておむつに温かい液体が少しずつ出ていく。女の子の大事な場所からお尻の方まで温かい液体が広がっていく。そして由紀が当てられている紙おむつはその液体を吸収していく。由紀はおしっこお漏らしを終わるとホッと息を漏らす。
「私は赤ちゃん、おしっこ出たから、ママ、早く戻ってきて。ママにおむつを替えてほしいの」
声にならない声で自分に言い聞かす。何回かのおむつへのお漏らしで慣れては来たがやはり漏れた後は気持ちがいいものではない。ここは精神科の病棟なので、変なことを話しても回りの患者には理解されないだろうと安心もしてみる。
「由紀、ミルク持ってきたわよ」
「あ、ママ」
ママはおむつをしたままとは言え、簡易トイレに座っている由紀を見てびっくりする。それはおむつを当てたままお漏らしをしてしまったのではという失望と、おしっこを簡易トイレで済まそうとしている前向きの行動に興奮しているのかの両方だ。どちらが正解なのかは由紀の次の言葉ではっきりしたが、ママはどっちであるにせよ赤ちゃんのように怒らずやさしく対応しなければならない。
「ママ、おしっこ出た」
「あら、そうおしっこ出たの。おしっこを教えられるようになったのね、偉いわね。じゃ、おむつを交換しましょうね」
やっぱりという失望はあったものの、粗相を教えてくることは少しは偉くなっていると自分に言い聞かせて由紀のおむつ替えの準備をする。由紀をべッドに寝かすと、今持ってきた哺乳瓶を口に入れてあげる。哺乳瓶はまだ温かい。由紀は哺乳瓶の乳首を咥えるとごくごくと飲んでいく。
「おいしいかな」
ママは由紀をあやしながら脇にある引き出しから替えの紙おむつを取り出す。それをべッドの脇に置き、由紀のパジャマを脱がしていく。
「由紀、ちょっとお尻をあげてくれる」
由紀はママの言葉を無視して哺乳瓶の乳首からミルクを飲むことに専念している。ママは仕方なく、パジャマをずらしては由紀の体を横にしてまたパジャマをずらすという方法でパジャマのズボンを脱がしていく。
「赤ちゃんの着るロンパースならおむつ替えも楽だけどパジャマだと大変ね」
ママは独り言を言うが、その言葉から由紀には期待の気持ちがふつふつと湧いてきた。赤ちゃんの着るロンパースも着てみたいね。だけど高校生の由紀の体に合うロンパースがあるわけないから。でもおむつを替えやすくするための下腹部にあるボタンがあって、しかもミニスカート付きのロンパースはかわいいだろうな、と気持ちだけが高ぶっていく。
ママは股式の紙おむつを外すと、おしぼりで由紀の両足を広げると下半身をきれいにしていく。大事なところからお尻にかけてシッカロールをやさしくかけていく。
「由紀、おむつ被れにならないようにたっぷりとシッカロールを付けましょうね」
由紀はきれいにしてもらった下半身にやさしく付けられていくシッカロールの臭いとその感触に酔いしれた。正直看護婦さんのおむつ替えは病人扱いの機械的なおむつ替えだが、ママのおむつ替えには愛情があった。同じおむつ替えでもその言葉や行動には愛情が感じられる。由紀はその感動に思わず声を出す。
「ママ」
「はい、由紀ちゃん、どうしたのかな。今新しい紙おむつをあてますからね、ちょっと待っててね」
ママは由紀の両足の付け根をもった。由紀の体は大人で大きく力が必要だが、一気におむつを当てるにはこの方法が早いと思ったからだ。また、由紀にお尻をあげてと言えばそれは赤ちゃん扱いではなく、大人として扱っていることになる。だから赤ちゃんにように扱う必要性があるのだからママはここぞと力を入れると由紀の両足を掴んで一揆に上に上げた。
ママは上げた両足を左手一本で押さえると、右手で紙おむつを掴んで広げると由紀のお尻に入れようとする。
「由紀ちゃん、お尻におむつを当てますよ」
由紀からの返事はなく、由紀哺乳瓶を吸ったままだった。ママは由紀の両足をさらに上げてお尻におむつを入れ込むと、ようやく力をゆるめることができた。赤ちゃんではなく16歳のわが子におむつを当てることになるなど想像もしていなかったが、現実に目の前で赤ちゃんのように哺乳瓶を咥えたままでおむつを当てているわが子を見ると悲しくなってしまう。だが医師からの説明で一時的な赤ちゃん返りだから赤ちゃんのように甘えさせてあげることが一番の記憶喪失の治療であることの説明を思い出すとママは、また勇気を持って由紀に接していく。
おむつの前当てを股から通して、両脇からお腹のほうにかけておむつの羽部を当ててマジックテープで固定しておむつ当てを終わらせる。
「由紀ちゃん、おむつを当てましたよ。いい子でおむつを当てられたわね」
由紀は相変わらず、無反応で哺乳瓶を吸っている。ママは赤ちゃんのように無心に哺乳瓶を吸うわが子をかわいいと思うが、いつまでこんな日が続かのかと思うとまた心配になってくる。
「由紀ちゃん、また明日くるからね、バイバイ」
相変わらずの無反応の由紀を横目に見ながらママはナースステーションへ向かう。強引に医師との面談を申し出で、状況がまれな病状を心配した医師が面談してくれた。
「そうですか。その対応でいいと思いますよ。少しずつ変化が起きてくると思いますので、どんなことでもいいですから報告してください。頑張ってくださいね。精神科医療的にも簡単なことの認識を繰り返す方法で治療をはじめましたからね」

次の日の午後もいい天気だった。今は主流な紙おむつだが由紀が本当の赤ちゃんだったら布おむつにしてあげたいなとママは思う。こんないい天気の日にきれいに洗った布おむつとおむつカバーを太陽の下に干せたら幸せだろうなと思う。やッぱり布おむつだったら汚れた時に気持ち悪いから早く教えてくれるでしょう。そうすればおむつが外れる時期も早まるだろうし、おむつが外れれば赤ちゃんを卒業できるのも早くなるかもしれない。ママはそんなことを考えながら病院へと急ぐ。
由紀はおしゃぶりを咥えながら天井を見つめていた。また、お漏らしをしたままそのままのおむつで過ごしているのかしらと心配しながらママが声をかける。
「由紀、具合はどう」
由紀は返事をせずに天井を見つめているだけだ。だが、由紀はしばらく前にお漏らししたおしっこが気になっているのは確かだった。朝のお漏らしを看護婦さんがきれいにしておむつを替えてくれてしばらくしてまたおしっこを漏らしていた由紀だった。だが、紙おむつの吸収力はすばらしく1回のおしっこはなんなく吸収してくれていた。だが、大事なところや、お尻などの凹凸部に付着したおしっこまでは吸収されない。それが気になっていた由紀であった。
「ママ、チッコ、出た」
「あらあら、じゃおむつ替えましょうね」
ママは病院に到着したなり娘のおむつ替えをするのはげんなりするが、これは治療のひとつとしてたくさんの愛情を持って由紀のおむつ替えをしていく。昨日のように愛情たっぷりのおむつ替えが済むと由紀は安心したのかおしゃぶりをチューチューと吸う。
「由紀ちゃん、おしっこはだいぶ前にしたのね」
黄色くなったが湿り気が少なく少し固形上になった紙おむつを思いだしながらママはさっき考えていたことを由紀に話し始めた。
「由紀ちゃん、今は紙おむつが主流だからおしっこをお漏らしても吸収してくれるからいいけど、やっぱり布おむつのほうがいいわよね。布おむつならお漏らししたら気持ちが悪いからすぐ教えてくれるでしょう。そうすればおむつが外れるのも早くなると思うのよ。でもね大人用の布おむつとカバーは一般には売っていないから我慢してね。布おむつで早くおむつが外れれば赤ちゃんを卒業するのも早くなると思うのよね。でも私は縫物が苦手でしょう。我慢してね。いろんなかわいい布おむつやカバーを由紀ちゃんに当てててあげたいけど我慢してね」
由紀はそのママの言葉をしんみりと聞いていたが、突然咥えていたおしゃぶりが由紀の口から落ちた。
「あら、ミルクが欲しいのかな。哺乳瓶に入れてきますね」
立ち上がろうとしたママの手を由紀が握った。そして由紀はその手をママのバストの方へ向けた。1回2回と指さす方向はママのおっぱいに向かっていた。
「由紀ちゃん、どうしたの。ミルクが飲みたいんでしょう」
由紀は返事をしないでさらに手を伸ばしてママのバストに触れた。ママはまさかとは思いつつ由紀の真意が分かりかねる。ママは由紀の手を取り、自分のバストにもう一度触れさすと由紀に確認する。
「由紀ちゃん、おっぱいが欲しいの?」
返事はしないで自身の手と指で行動で意思を示してくれた由紀がうれしいと思いつつ、おっぱいを欲しがるなんてと心配する。だが、医師の説明を再度思い出す。赤ちゃんのようにやさしく接することが赤ちゃん返りを早く治しそれが記憶喪失の治療に役立つことを思い出す。
「由紀ちゃん、わかったわよ。おっぱいが欲しいのね」
決心したママはブラウスの前ボタンを外し、ブラの片側だけを上にあげると乳首が由紀の前に現れた。ママはそこそこのバストがあり、由紀との会話の中で乳首も興奮して立っていた。今の状況では母乳が出るわけないが、形だけでも由紀におっぱいをあげようと思う。ベッドの脇に椅子をずらして、ベッドに寝ている由紀の頭をママのバストに近づけた。
ママにされるままにしていた由紀だったが目の前におっぱいとママの乳首が現れると由紀をそれをじっと見つめている。
「由紀チャン、おっぱいが欲しかったのね。いいのよ、母乳は出ないと思うけどおっぱいを掴んで飲んでちょうだいね」
ママは自分のおっぱいを見つめたままで何もしようとしない由紀を見つめている。ママははそっと由紀の頭の後ろに力を入れると自分のおっぱいの方に由紀の顔を押し付けた。そして由紀の手を自分のバストに触れさせた。
由紀は自分でママのおっぱいに吸いつく勇気がなかったがママに押されてママの乳首を口に含んだ。やさしい女性の香りが充満し、手には柔らかいおっぱいの感触が宿った。由紀はむしゃらに乳首を吸い、納得いくまでママのおっぱいに触れていた。
そうしてどのくらい時間がたったのだろう。由紀はおむつを当てられた赤ちゃんの格好でママのおっぱいを口一杯に含んで満足した顔をなっていた。そしてその赤ちゃんの充実感と満足感を満たした由紀は眼を閉じたまま小さな寝息を立てていた。由紀の寝息に気づいたママは由紀をベッドに寝かせると、自分のバストをブラジャーに隠してブラウスのボタンを留めた。
「由紀ちゃん、ねんねかな。また明日来るからね」
ママは由紀の満足したような顔をやさしく再度見つめると病院を去っていった。

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魔法の1週間(3)

魔法の1週間(3)

入院

東西病院の緊急受付から担架で院内に入ると、すぐに若い医師がやってきた。病状などを聞きながら聴診器で真剣な顔で聞き入っている。さらに血液検査を指示すると、次には頭部のMRI検査を指示する。夕方までには病状の診断が出る予定だ。緊急治療室から出て行っては検査を行っての繰り返しでその日の夕方を迎えた。
「お母様ですね」
「ええ、そうです」
「娘さんは特に大きな外科的と内科的な病状は問題ないと思いますが、精神的に少し異常があるのかもしれません。1日だけ検査入院をして明日の様子を見ましょう。明日精神的な問題なければ退院できると思います」
「そうですか、安心しました」
「でも、まだ明日退院できると決まったわけではないですよ。尿のお漏らしが気になるし、記憶に障害が出ないといいのですが」
「中間試験で少し深夜までの勉強のしすぎだと思うんです」
「そうですね、疲労は溜まっているようですので、今日はゆっくり休んでもらうことにしましょう、入院の手続きをしていただいたら、お母様はもう、お帰りになって結構ですよ」
「はい、ありがとうございます、でも病室は何号室になりますか?」
「それは後で看護婦から連絡させます」
由紀にはその医師とママとの会話がベッドの上で聞こえていた。今日、ゆっくり寝れれば明日はもう元気一杯の感じだが、睡魔がそのことを打ち消してしまう。由紀は病室へと搬送され始めたてベッドから感じる揺れに身を任すことにした。

病室へ搬送されてきた頃には、病院の夕食の時間も終わりに近づいていた。由紀のベッドの後ろからついてきたママは、周りが食事の終了する時間であることに気づくと、今日の由紀の夕食がないことに気づく。
「あの、看護婦さん、この木村由紀の母親ですが、今日の夕食はあるのでしょうか?」
「すいません、時間の規則でもう夕食をお出しすることはできません。木村様は内臓疾患はありませんので、好きなものを夕食で召し上がっていただいて問題ありませんよ」
「そうですか、ありがとうございます、由紀、夕食は何を食べる?」
由紀は相変わらず寝たままだ、このままでは何かを買ってきても食べてもらえないかもしれない。ママは由紀のベッドのそばに座り由紀の顔をじっと見る。
「由紀、目を覚まして」
だが、由紀は眠ったままだ。ママは由紀に付添っていても何も変わらないと感じると、一旦家に帰ろうとしていた。
「由紀、由紀が好きなお寿司でもと思うけど、ずっと寝たままだと腐ってしまうのももったいないし、売店で菓子パンと飲み物でも買ってこうようか?」
由紀に話しかけるが由紀は眠ったままだ。ママは決心をすると病院の売店に行き、菓子パンと飲み物を買って由紀の病室のテーブルに置く。
「由紀、菓子パンと飲み物を置いておくからね。目が覚めたら食べてね。今日は帰るね。また、明日様子を見に来るからね」
そう言うとママはカーテンを閉めて家へと帰って行った。由紀はしばら寝ていたが急に空腹を感じると空腹感はだんだん強まっていく。気がつけば朝に軽い食事をしただけで、ランチも食べていなかった。由紀はこのまま寝てしまうのもいいが、夜中に目が覚めるのも嫌だし、空腹には勝てなかった。うっすらと目を開けてると病室は夕食の後の片づけがひと段落した後の団欒の時間だ。小さな声でのテレビの音と看護婦さんの会話くらいしか聞こえてこない。由紀は急に起き上がりテーブルの上に置いてくれた菓子パンと飲み物を食べ始めた。由紀はただ空腹を満たすためだけの動物的感覚で食欲を満たしていった。
簡単な夕食だったが、空腹を満たすと少し安心感が出てきた。安心感は出てきても今日はもう寝るだけだ。中間試験での寝不足が満腹になった由紀を襲っていく。だが、ランチの時間に初めてのお漏らしをした後はトイレに行っていない。襲ってくる睡魔に立ち向かうようにおしっこをしたいという動物的整生理現象が立ちはだかってきた。ママが居る間にこういう事態になってくれたらと思ってもそれは後の祭りだ。由紀は眠りたくても眠れない体と格闘する。
由紀は下半身を包んでいる紙おむつを確認すると、お漏らしの決心をする。だが、横になったままではおしっこは出そうにない。ふと見るとテーブルの隣には簡易トイレが置いてあるのに気づいた。由紀はまた動物的な反射神経のようにガバッと起き上がるとおむつを当てたままでそのまま簡易トイレに腰掛けた。お漏らしのその後はナースコールで看護婦さんを呼んでおむつを替えてもらほうがいいのか、そのままにしておくほうがいいのか、答えが出ないままに、由紀はとりあえず襲ってくる尿意に勝てなかった。丁度様式トイレと同じように簡易トイレに座っていると我慢できなくなったおしっこがちょろちょろと出始めた。おしっこはおむつに吸収されつつもお尻のほうにも温かい液体として流れていくのがわかる。布団を汚してしまうことがないかとの心配は簡易トイレで済ますことでなくなった。そして汚す心配から開放されると出し始めた尿は止まらなくなる。温かい液体がお尻だけではなく、おへその近くにまでも吸収されているような感じだ。
「あ、私は赤ちゃん、おむつにお漏らししている赤ちゃんなの」
声にならないつぶやきを頭の中で繰り返しながら、由紀はおむつの中へのお漏らしを実感した。放尿が終わると、由紀は心配になっておむつの上から手で触ってみるが、パジャマにはおしっこが漏れていることはなかった。安心するとお漏らしをしたおむつの感触をかみしめる。
「あ、私は赤ちゃん、おむつにお漏らした赤ちゃんなの」
もう一度、その言葉を繰り返すと、今度は睡魔が襲ってきた。空腹を満たし、放尿欲が満たされると疲れた体は睡魔にはかなわない。由紀はナースコールを呼ぶことに悩むこともなくバタッとベッドに横たわると深い睡眠に落ちていた。

翌朝、由紀はいつもより早く目が覚めた。そうは言っても病院での起床時刻ははるかに過ぎていた。由紀は昨日の夜お漏らしをした紙おむつを確認する。おしっこを吸収したおむつは少しゴムのようになっているはずが、本当の紙のようにサラサラとしか感触だ。昨日は早めに寝てしまったので、その間に看護婦さんがオムツを替えてくれたのだろうか。正直に言っておむつを替えもらった記憶がない。でもおしっこを吸収した感じのおむつではなく、新しいおむつが由紀に当てられていることを感じた。病院の起床時間は早いが、朝食の時間はだいたい起床から2時間後だ。由紀は起床時間には起きれなかったが、朝食の時間前らしいことに気づく。若い体は少し睡眠をとれば今度は空腹が来る。だが、空腹が来る前には老廃物を出したい現象も襲ってくる。それも朝の場合には尿と大きな方も襲ってくる。由紀はトイレに駆け込むか、このままおむつにお漏らしをするかをおぼろげに迷う。せっかく赤ちゃんのように紙おむつを当てられてお漏らしが許される生活だから、もう少し甘えたいという気持ちとお漏らしをしておむつを替えられるのはやっぱり恥ずかしいという気持ちが交差する。気持ちが交差するなか、由紀はぼんやりと決心していく。
「そう、やっぱり私は赤ちゃんなの、病気なんだわ、この病院で治してもらおう」
由紀はそう考えるとまた簡易トイレに座り、小と大の排泄物でオムツを汚し始めた。私は赤ちゃんと追い込む気持ちがそうさせていた。私は記憶喪失で何を言われても反応せず、ママが来ても分からないという症状だ。おむつの中への排泄が一通り終わりお腹の反乱が終わると由紀はまた睡魔の中に落ちていた。
「木村さん、木村由紀さん」
看護婦が呼ぶ声に由紀は反応して目が覚めた。由紀は少し目を開けると、ベットの脇に看護婦が立っていた。
「木村さん、食事はとれそうですか?、もう朝食の時間はおしまいになりますよ」
由紀は返事をせずにぼんやりと天井を見続ける。その様子に看護婦は違和感を持った。そしてほのかに匂うアンモニアを感じると看護婦は由紀のお漏らしを想像していた。看護婦はそろそろ由紀の意識が戻り、普通の生活をできるはずだという医師の見立てが外れていたことを感じるとナースステーションに戻り、症状を看護婦長に報告した。
婦長はまず、おむつを交換することを指示し、医師の診察の指示もした。看護婦はなれた手つきで由紀のおむつ交換の準備を始めていた。由紀に多少の意識はあったが、症状は何もわからない赤ちゃんのようになっていた。
「あ、汚れたおむつを交換してくれる。赤ちゃんのようにお漏らしをしたおむつを交換してくれる」
由紀は恥ずかしさは感じるが何もできない赤ちゃんのように看護婦の言いなりになっている。
「はい、木村さん、おむつ替えますよ」
看護婦は小さな声で由紀につぶやくと慣れた手つきで汚れたおむつを交換していく。由紀は自分の排泄物を見られている恥ずかしさに耐えながら赤ちゃんのように何もしないでいた。
「赤ちゃんのように汚れたおむつを交換されているわ。私は赤ちゃんなの」
汚れた下半身をきれいにしてもらって新しい紙おむつが当てられると、今度は医師がやってきた。医師の診察にも特に反応せず、またどんな問いかけにも由紀は何も話せなかった。
「意識はあるようだが、記憶喪失かな。病状的には精神科の判断を仰ごう」
意思と看護婦はそれだけ言うと由紀のベッドから去って行った。しばらくすると精神科の医師が診察にきた。小学生にもわかるような質問にうんざりしながらも由紀は何も答えられなかった。由紀の入院はしばらく続きそうだ。

午後になるとママが見舞いに来た。由紀の大好きなお寿司を手土産に見舞いに来た。内科的にも外科的にも問題のない由紀はお寿司をペロリと平らげた。いつもの由紀の食欲と変わりはない。だが、由紀とのいつもの会話がない。その代わり由紀はママに今までには考えられないおねだりをするようになっていた。
ママが来る前におしっこをもよおしていた由紀はさっきと同じ方法でおむつの中に用を足した。1回分の尿は紙おむつが十分吸収してくれる。何もなかったようにそのままにしていたのだった。
ママは由紀のために雑誌や本、そしてテレビを見るためのカードなどをそろえてくれたが、お礼を言うわけでもなく、ママにおねだりしたのはおむつ交換だった。
「ママ、おしっこ出た」
「由紀、ようやく話してくれたのね、ママが分かる?」
由紀はそういう会話には返事もせず、おしっこを漏らしたことを訴える。ママは仕方なく、お漏らしを確認すると看護婦さんに連絡をした。しかしママは見舞いにいる間くらいは由紀のおむつを交換してあげようと思う。由紀のおむつを新しい真っ白な紙おむつに替えてあげた。おむつを替えている間もママの会話に由紀からの返事はない。そしておむつ交換が終わると由紀はさらにママに甘えはじめた。
「ママ、ミルク」
「今度はミルク?ちょっと待っててね」
いくら日常会話をしても由紀の口から出てくるのは、赤ちゃんの言葉ばっかりだった。おかしくなってしまった由紀を見つめながらどうしたらいいのかと考えていると、呼び止められる。
「木村さん、精神科の医師からお話があるそうです。こちらへどうそ」
気がつけば看護婦が呼びに来ていた。ママはナースステーションの隅にあるソファに案内されると年老いた精神科の医師が現れた。
「木村さん、お子さんの由紀さんは一時的な記憶喪失と思われます。きっかけはよく分かりませんが、いろいろなことを話しかけたり、今までの思いで深いものなどを見せて記憶が戻るように勤めてください。医療としては最善を尽くしますが、家庭や学校での思い出や友達と会ってもらうのも効果があると思います」
「分かりましたけど、由紀は変なことを言うのです」
「どんなことですか?どんなことでも話してください。それが早く記憶を戻すきっかけになるかもしれませんから」
「ええ、由紀はその、赤ちゃんのようなんです。お漏らしはするし、今日はミルクと言って私にせがむのです」
「おむつは木村さんが替えてあげたのですか?」
「ええ、病院の規則は分かりますが、私が病院にいる間はおむつ交換はしてあげようと思いまして、無理を言いました」
「それで由紀さんはどうでしたか?」
「別に何も変化はなかったですけど」
「そうですか。きっかけの原因は木村さんの家庭からするとよく分かりませんが、由紀さんは赤ちゃん返りをしているのでしょう」
「赤ちゃん返りですか?」
「そうです、よく2番目の赤ちゃんができたときに1番目のお子さんが母親を取られたような気持ちになって自分も赤ちゃんの振りをして母親を自分方に向かせようとする気持ちが高ぶると発生します。木村さんのご家庭は父親が不在ですか?」
「長期間の海外出張が多いので、父親が普段いなくて寂しいという気持ちは分かりますが、それが原因とは考えづらいです」
「そうですね、原因追求と同時に治療方法ですけど、由紀さんを赤ちゃんのようにかわいがってあげてください。おむつも替えてあげてください。ミルクも欲しがったら哺乳瓶で差し上げてください。看護婦には手配をしておきます。それから、赤ちゃんのような服があればそれも試してみてください」
「赤ちゃんの服と言いますと?」
「体はもう大人ですから大きな赤ちゃんの服というのは難しいと思います。ですので、涎掛けとか、おしゃぶりとか簡単に手に入るものがあれば由紀さんをそれで赤ちゃんのようにしてかわいがってあげることです。それから視覚に訴える部分が大きいですので、そういう赤ちゃんの姿になった由紀さんを鏡で見せてあげてください。さらに写真にとって手元においてあげて本人がいつでも見れるようにしてあげるのもよいかもしれません。もちろんおむつ交換の写真も赤ちゃんのようで効果があると思います」
「分かりました」
「お母さんなりの愛がこめられた赤ちゃんの姿をさせて、かわいがってあげてください。由紀さんが思い切り甘えてくると赤ちゃん返りが終わり、記憶が戻るのにも役立つと思います」

精神科の医師からの説明に唖然としながらも由紀をどうやって赤ちゃんとして扱うかをママは考えていた。病室へ行く途中、ママは売店に寄ってみた。東西病院は産婦人科から小児科など複数の専門を持つ総合病院だ。売店で扱っているものも赤ちゃん用品から老人用までいろいろなものがそろっている。ママはすぐに目についた哺乳瓶、おしゃぶり、そして大分小さいだろうが、涎掛けを購入して病室へ向かう。病室で赤ちゃんのようにするための品物を由紀に見せてみるが由紀は相変わらず何の反応も示さない。本当に由紀は赤ちゃん返りになってしまったのだろうか。由紀を赤ちゃんのようにかわいがってあげれば本当に直るのだろうか。そんなことを考えて由紀に話しかけても由紀は相変わらず無反応のままだった。

次の日の午後、由紀の友達の美恵が見舞いにきてくれた。
「あら、美恵さん」
「お見舞いにきました。由紀、元気?」
「美恵さん、由紀は記憶喪失のようで何も覚えていないようだし、何も話さないのよ」
「あら、大変、じゃ、楽しいことととか、いろいろ思い出話を話してみますね」
ママは由紀が赤ちゃん返りしていることは話したくなかった。高校生にもなって赤ちゃん返りではみっともないし、まずはママと由紀の2人だけで赤ちゃん返りを直していこうと考えていた。
「本当に無反応ね、由紀、でも病気じゃ仕方ないよね。何か思い出だったようなものをもってまた来ます。さようなら」
由紀の無反応さに美恵もあきれて早々に退散していった。しばらくすると高校の担任の先生が見舞いに来てくれた。
美恵に説明した内容と同じ内容を説明すると、若い女性の病室に居づらいのか、若い男の担任の先生も早々に立ち去った。
「由紀、友達や先生の顔も分からないの?」
由紀は相変わらず無反応のままであった。

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魔法の1週間(2)

事故

最後の中間試験の音楽の試験は無事に終わった。筆記の楽譜のテストの難しい問題は除いてそれなりにに回答できたし、歌の試験も下手なりに心をこめて歌ったつもりだ。由紀は今回の中間試験は問題ないだろうと確信していたが、心は早くも今まで思い出すあのシーンで一杯だった。試験の後のホームルームが終わり掃除をすると解散だ。これで1週間は試験休みだ。由紀と美恵はいつものように家路に着く。
「由紀、やっと終わったね」
「そうね、今回の試験は初めてだったけど、すこしがんばったわよ。おかげで睡眠不足よ」
「そう、偉いわね。私も勉強はしたけれど結果が不安よ」
「大丈夫よ、美恵、今までも中学の試験もなんとかなってきたじゃない」
「そうよね、由紀」
「そうよ、でも美恵、私、本当に少し疲れたわ、家で眠りたい」
「そう、じゃ今日はバイバイしよか。私も気疲ればっかり多くてさ、すこしぼっとしたいわ」
「じゃ、バイバイ」
由紀は家に帰るまでの間、あの日の光景を頭の中思い出す。思い出したり、忘れようとしたりあの日の光景は頭の中で浮かんでは消えたりしていた。そして家に着くと玄関の鍵を開けて入る。
「ただいま」
いつもより元気なく小さな声で奥にいるはずのママには聞こえるように言う。由紀は未だに母親のことをママと呼んでいる。ママの今日のパートの仕事は定休日で休みだ。また、パパはプラント会社の会社員でまた、長期の海外出張で家にはいない。
「由紀なの」
奥からママの声がいつものように聞こえてくる。キッチンでランチの用意をしているらしい。
「そう、ただいま」
さらに小さく、元気がない声で返事をすると2階の自分の部屋にいく。由紀には兄弟はいない。一人娘で育てられたがそれほどわがままほうだいというわけでもなく、ごく普通の娘に成長していた。しかし、高校生にもなってもママと呼ぶのは多少は子供じみている面もあるが、最近はママと呼ぶ家庭も多いので、特筆すべきことでもないだろう。しかし、赤ちゃんへの憧れが人一倍強い点が他の同世代の娘とは違っていた。
ママはキッチンでランチの支度をしながらも由紀の元気のない声に不安に思うが、中間試験が終わって疲れているのだろうとしか思わない。そのまま、ランチの仕上げに入る。
由紀は自分の部屋に入り、制服から普段着に着替えて自分の部屋を見渡す。見慣れた机に数冊の本やテレビにヌイグルミがある。上着にトレーナを羽織り、ミニスカートを穿いて自分の部屋をいつものように再度、見渡すとドアを開けて出て1階のキッチンへと向かうと、突然の病魔が由紀を襲った。
「ママ、気持ちが悪い、頭が痛いの」
「ど、どうしたの、由紀、中間試験で毎晩遅くまで勉強してたから疲れているのでしょ」
「そうだと思うけど、大分変なの、体が言うこと聞かないような」
由紀はママが居るキッチンへ着くとすぐさま訴えた。ママは由紀に近づき、肩を抱いて様子を見るがいつもの様子と違う気配を感じていた。
「ママ、お願い、体がおかしいの、頭が痛くてたまらないの」
ママは由紀のおでこに手を当てるが、熱があるわけではなかった。由紀の顔を覗いて元気付けるが由紀はどんどんと体の力が抜けていくようだった。
「ママ、もうだめ」
由紀はそう言うとへなへなとママの体に触りながらその場の座りこんでしまう。驚いたママも座り込んで目線を合して様子を見るしかない。
「ママ、おしっこが出ちゃう、でも体が言うこと聞かないの」
「え、おしっこ、じゃ、ほら、トイレに連れて行ってあげるから」
由紀は座り込んだままおしっこを漏らし始めた。キッチンという場所で、しかも洋服を着たままでのおしっこはなかなか出なかったが、まるで魔法にかかったように赤ちゃんのように一気に放尿し始めた。
「あ~出ちゃう」
「由紀、トイレに行こうよ」
ママは由紀を立たせてトイレに連れて行こうとするが、由紀は座り込んだまま、おしっこの真っ最中だった。じわじわと下着を通り越した黄色い液体はキッチンの床に染みわたって行く。白いハイソックスも黄色く染まっていく。
「ママ、ごめん、おしっこが我慢できない。勝手に体から出ちゃったの、体がおかしいの、頭が痛くてたまらないの」
ママは、急な思いもしない由紀の言葉にびっくりしていると、ようやく由紀の下半身から染みわたるおしっこに気づく。由紀は放尿が終わるとそのままママの膝を枕にするようにして眠りこむように横になってしまった。
「由紀、大変、おしっこ漏らしちゃったの、今、きれいにしてあげるから」
「ママ、ごめん、もう駄目、救急車を呼んで。頭が痛くて死にそう。もうだめ」
由紀はそのまま目を閉じるとそれからは何を言われても返事ができなかった。ママは気が動転していたが、救急車を呼ぶこと、そして、由紀がお漏らししたおしっこをきれいにすること、その2つしか思いつかない。まずは、早く来てほしいので、救急車を呼んでみる。今まで救急車を呼んだことはないので、恐るおそる小さい頃から覚えているあの番号をかけてみる。
「火事ですか、救急ですか?」
「急病人です」
「はい、こちら救急です。どうしましたか。お名前は、ご住所は」
「木村由紀と言います」
立て続けに質問をされるが何から話していいか混乱している状況でひとつひとつ質問に答えていく。ようやく一番大事な由紀の症状について話すことができた。
「そうです、いつものように学校から帰宅した後、頭が痛いとか言って座り込んでしまって、そしてそのまま横になって倒れてしまって」
「熱はありますか?」
「いえ、熱はないようですが、頭が痛くて、体の様子がおかしいと言って、へなへなと倒れてしまって」
「わかりました、10分から15分で行けると思います。そのほかに様子がおかしい点はありましたか?」
「ええ、あの、言いづらいのですが、座り込んでしまって倒れる前におしっこを漏らしてしまいまして」
「わかりました。自律神経などの過去の病歴はありますか?」
「神経のことはよくわかりませんが、由紀はおむつが外れた後、学校でも家でもお漏らしなどしたことありません」
「こんなことは初めてですね、大丈夫ですよ、すぐに救護が行きますから」
ママは電話を切った後、次にやるべきことを確認する。由紀は相変わらず、キッチンに横になったままだ。そう、由紀の漏らしたおしっこをきれいにしなければいけない。ママは急いでまずは床に染みわたっている尿を拭いていく。タオルで由紀のおしっこで濡れた足をきれいにしていくが、下着やハイソックスはもうおしっこを十分に吸いこんでいて、タオルでは間に合わない。ママは由紀の部屋に行くと着替えの下着にスカート、そしてハイソックスを準備すると、キッチンに戻る。おしっこで濡れたハイソックス、スカートと下着を脱がすと、お湯に浸したタオルで由紀の下半身をきれいにしていく。太ももや股の合間もきれいにすると、着替えの下着のショーツを穿かせ、ハイソックスを穿かせ、そしてスカートを穿かせた。ママは由紀の顔を覗きこむが、由紀は横になったまま眠っているようだ。ママは、そのとき救急車の小さなを聞いた。そしてその音はどんどんと大きなっているようだ。救急車が着くのはもうすぐだ。
ママは由紀のおしっこで汚れた衣類をまとめて洗濯機のある部屋のバケツに入れて、水に浸した。キッチンに急いで戻り、おしっこお漏らしがわからないように再度床をきれいにしていく。その時だった。
「ピンポーン」
「救急隊です、木村さん」
「はい、木村です、ありがとうございます」
「患者さんの木村由紀さんはどちらにいますか」
「はい、奥のキッチンです、どうぞ」
「失礼します」
救急隊は由紀を見るなり、熱を計ったり、脈を見たり、診察をしていく。外傷もなく、ただ、横になって眠っている患者の病状はなかなか判断が難しい。ただ、ひどい頭痛を起こして倒れてしまい、さらに失禁もあったとなるとMRIなどの頭部の検査や、血液検査なども必要になり検査入院は必須になってくる。
「かかり付けの病院はありますか?」
「いえ、近所の内科医ぐらいで、病院にはあまり」
「わかりましたなるべく近くで入院する病院を探して見ますので」
そう言うと、2名のうちの1名の救急隊は無線で会話しながら、家の外に出ていく。もう1名の救急隊は持っていた袋から見慣れない物をを取りだすとその準備に取り掛かる。
「あの、由紀に何をしようと」
「ええ、お漏らしがあったと聞きましたので、これは紙おむつです。救急車での搬送中に社内でお漏らしがあると衛生上問題ですので、患者におむつを当てさせていただきます」
由紀はそのおむつという言葉がおぼろげながらに聞こえてきたとき、若い救急隊の男性におむつを当たられるのは恥ずかしいと思う感覚は多少あったが、まるで魔法にでもかかったように由紀はそのまま何もできない。
「あの、おむつは私が由紀に当てますので、出て行ってもらえますか、まだ、嫁入り前の娘ですので、私がおむつを当てますから」
「奥さん、大丈夫ですか。我々は救急隊ですので、慣れていますので心配しないでください」
「いいえ、入院後は病院にお任せしまが、今は私がやりますから、出て行ってください」
「わかりました。もし、おむつを当てられなかったならすぐに呼んでくださいね、それからおむつが当て終わったらすぐに呼んでくださいね。病院は今すぐに見つかると思いますので」
ママは由紀にしてあげられることはしてあげたい、入院した後は、病院にお世話になるが、それまでは自分が世話をしてやりたい、そんな気持ちで一杯だった。気迫のある言葉に救急隊はあきらめて一度家の外に出て行った。
ママは、相変わらず寝たままの由紀のスカートとショーツを再度脱がしていく。赤ちゃんならその両足を持ち上げてお尻の下のおむつを入れこむが由紀のような大人ではなかなか重くてすぐには入れられない。ママは介護用のおむつ替えの風景をテレビでみたことを不意に思いだす。由紀の体を横にすると、お尻のあたりに紙おむつを敷くともういちど由紀の体を仰向けにするとおむつは丁度由紀のお尻の下にすることができた。由紀の股を広げると紙おむつを当て両腰からおむつをおへその上へ導くと、そこでマジックテープで留めていく。紙おむつの上からではピチピチのミニスカートを穿かせるのは難しい。ママは奥から毛布を一枚持ってくると由紀にかけてやる。
「すいません、できましたので」
「おむつを当てることができました?」
「ええ、済みました」
「病院は東西病院になりましたので、すぐに搬送します」
救急隊は由紀を担架に積むと救急車へと移動する。ママは、家の鍵を閉めると救急車に同乗する。バタンと後ろのドアが閉められると、救急車はいつものあの音を鳴らし始め、ゆっくりと走り始めた。窓から見るとそこには数人の近所の人がひそひそ話をしながらこちらを見ている。ママは、その視線を感じながらも横になったままの由紀を覗きこむが由紀に相変わらず眠ったままだ。
「由紀、大丈夫だからね」
由紀は当てられた紙おむつの感覚を感じながらもママの言葉が聞こえていたが返事をすることはできなかった。慣れない救急車の中で由紀は何もできずに目を閉じていた。そして由紀は紙おむつをママ自身が当ててくれたことに感謝していた。あのまま、まだ若い救急隊の若い男性のおむつを当ててもらうために股間を見られたらと思うとぞっとするが今は体を動かすことも難しい。由紀は物ごころついてから初めて当ててもらった紙おむつの感触を感じながら、救急車の揺れの中にいた。

魔法の1週間(1)

魔法の1週間(1)

高校1年の初めての中間テスト後に、由紀は突然病魔に襲われる。家に着くなり、気持ちが悪い、頭が痛いといい、キッチンで倒れる。近寄ってきた母に膝枕をおねだりしたのもつかの間、おしっこ、と言ったと思ったら、その場でおしっこを漏らしてしまう。その後も寝たままで頭が痛いと言い続ける、苦しい表情をしているので、母は仕方なく救急車の手配をする。
赤ちゃん志願の由紀が経験した魔法の1週間の始まりだった。

【警告】 救急性がない私用などで故意に公共の緊急機関を利用すると法の下で罰せられることがあります。


異なる憧れ
事故
入院
赤ちゃん返り
退院


異なる憧れ

「由紀、公園でだべっていこうか?」
「そうね美恵、天気もいいし。暑くもなく寒くもなくて公園はいいかもね」
木村由紀と佐藤美恵は少し慣れてきた高校1年の春を満喫していた。高校からの帰り道にほど広い公園がある。部活の体力作りのためのマラソンコースになっているが、それ以外は幼稚園や小学校の子供たちの遊び場になっている。滑り台やブランコのある場所には、丁度よいベンチが数個あり、ひなたぼっこのお年寄りもときどき見かける。
「由紀、ここにしようか」
由紀と美恵はその中の一つのベンチに腰かけると、仲良く体を寄せ合って座る。
「由紀、来週からのゴールデンウィークが終わると中間試験だって、ゆっくりもしてられないわね」
「そうね、憂鬱よ」
由紀も美恵も勉強の方はそれなりの普通組だ。そして何か部活をやるでもなく、勉強をするでもなく、ようやく始まった高校生活に慣れていくのが背一杯だった。そこに赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるが由紀も美恵も赤ちゃんの泣き声には構わず話を続けていた。
赤ん坊を抱っこした若いママさんが由紀たちの目の前のベンチに座り、赤ん坊をあやし続けた。ママはカバンから哺乳瓶を出して、赤ん坊の口にあてがうが赤ん坊は泣きやまない。次にママはおしりのあたりのにおいを嗅ぐと、わかった、とばかりに赤ん坊のおむつ替えの準備を始める。由紀と美恵の視線が赤ん坊に行ったのはその時からだった。
「由紀、赤ちゃんのおむつ替えを手伝うか?」
「そうね、そうしよう、美恵」
由紀と美恵は若いママさんに近づいていく。近づきながら、美恵はママさんに声をかける。
「あの、赤ちゃんのおむつ替えを手伝わせてください」
「あ、いえ、大丈夫ですから。おなかが空いているのかと思ったら、おしりが汚れているようで。すぐきれいにすれば泣きやみますから。うるさくしてごめんなさいね」
「いえ、とんでもありません、では、ここで見ていていいですか?」
「ええ、いいですけど、この子、うんちを漏らしているみたいで。汚いし、においますけど」
「大丈夫です。じゃ、ここで見せてください」
若いママさんはそれを聞くと、赤ちゃんをベンチに横に寝かせる。赤ちゃんはさっきと同じく大きな泣き声で泣き続けている。ママさんは替えの紙紙むつを広げ終わると、ロンパースをおしりのところから外す。そして、見え始めた紙おむつを外すと、そこには黄色い液体のような赤ちゃんのものがあった。
「やっぱり、たくさん出ましたね、きれいきれいしましょうね」
「わ、ミルクのにおいですね。赤ちゃんのウンチは」
初めて見て、初めてにおいを嗅いだ赤ちゃんのうんちは、色は明るい黄色でにおいはミルクのにおいだった。ママさんは汚れた紙おむつをきれいに外すと、おしりふきで赤ちゃんのおしりをきれいにしていく。新しい紙おむつの上に赤ちゃんを乗せるとシッカロールを軽くふきかけて、紙おむつを当てていく。ロンパースを元通りに直していくと、赤ちゃんの泣き声も不思議なくらいに止んだ。
「すいません、抱っこさせてください」
「ええ、いいわよ、どうぞ」
美恵はあかちゃんを抱き上げると、思わず、「かわいい」と何度も声を上げる。「軽いわね、そして体全体からミルクのにおいがするわ」
「私にも抱かせて」
由紀は美恵から赤ちゃんを渡してもらうと、赤ちゃんの顔を覗き込む。とっさに赤ちゃん言葉と態度で赤ちゃんをあやすと、赤ちゃんは笑んでくれた。
「かわいい」
「ミルクを上げたり、おむつを替えたり大変でしょう?」
「そうね、でももう慣れたし、こうして笑ってくれると、そういう大変さは吹き飛んでしまうわよ」
「そうよね、何事にも代えがたい笑顔よね、ね、由紀」
「そうね、本当にかわいい赤ちゃんね」
「私も赤ちゃんが欲しいわ、そう思わない由紀?」
「ええ、そうだけどすぐにはね」
「そりゃそうよ、まだ、彼氏のかの字もないもんね、お互いに」
「そのうち、いい人が現れますよ。お2人みたいなきれいでかわいい娘さんを世の中の男性はほっときませんよ」
でも、縁というのはタイミングもありますから。お楽しみに」
「そう、赤ちゃんのお名前は」
美恵とママさんは赤ちゃんの話題で盛り上がっていた。由紀も相槌は打っていたが、由紀はかわいい赤ちゃんが欲しいという気持ちより、別の感情が沸き出ていた。
「私もあんな風にやさしくされてみたい」と声には出すことはできなかったが、由紀は心の中に赤ちゃんになってみたいという憧れの気持ちがあった。
一方、美恵は赤ちゃんが欲しいと思いながらも、それは近い将来の話として憧れを声に出していた。
「由紀、どうしたの、黙ったままで」
「いえ、なんでもないの。かわいいわね、でもそろそろママさんにお返ししなきゃね」
大人たちの会話を理解するはずのない赤ちゃんはいつしか、眠りに落ちていた。
「それじゃ、楽しかった。ありがとうございました」
「じゃ、また」
眠り始めた赤ちゃんを起こすまいと、由紀と美恵は声を小さくしてお礼を言うと、公園を後にした。

「由紀、赤ちゃんかわいいわね。私も早く結婚してママになりたいな」
「そうね」
「なに、その生返事は、赤ちゃん欲しくないの?」
「ごめん、赤ちゃんいいね。でも、もう少し、将来の事かなって」
「それはそうよ。憧れよね」
「美恵、私はさ、そうね、なんというか、ん~。やっぱり赤ちゃんはいいよね」
「由紀、何を言いたいのか、わからないけど」
「赤ちゃんはかわいいわね、ということよ。じゃ、また、明日」
「じゃね、バイバイ」
「バイバイ」
美恵と別れて歩きながら由紀は自問自答する。赤ちゃんの何がいいのか、由紀は自分も赤ちゃんのようになって甘えたいという気持ちを素直に表現できなかった。でも、心の中では、おむつを当ててミルクを飲ましてもらい、おむつが汚れれば、丁寧にきれいにしてもらう。そんな風に自分が赤ちゃんになってみたいという気持ちが高ぶっていた。
一方、美恵は赤ちゃんの世話をする方の憧れを持っていた。年頃の女子であれば当然のことだが、由紀は反対の気持ちだった。赤ちゃんのようになって甘えたい。2人の気持ちは正反対だった。そして由紀は当然そんなことを美恵に説明することはできなかった。
そんな時、不自然なことが発生した。二人はいつになくぎこちなく別れたのだった。だが、中間テストが来週からということで、由紀は勉強もしたかった。平均より、少しいい成績を目指す由紀は、それなりに勉強をしてきたし、これからもしていくつもりだ。でも、今日の赤ちゃんとの出会いは、そんな由紀の中間テストへの勉強の意欲を半減させていた。勉強をしながらもどうしたら、赤ちゃんのようにお漏らしをしてもいいようにおむつを当てられ、ミルクを飲ましてもらえるだろうか。そんな非現実的なことを現実にすることは不可能だと、言い聞かせて、勉強を始めるが、10分もたたずに非現実の世界の空想に浸る。
由紀はどうしたら、現実の世界で不思議に思われないで赤ちゃんのように扱ってもらえるのか、その方法を考えていた。中間テストの勉強もそこそこに休憩時間と偽りながら、赤ちゃんのようになる方法を考える。考えては勉強して中間テストを受ける。中間テストの最終日の前日、学校からの帰り道に救急車がすぐ近くで止まっていた。しばらくすると急病人が担架に乗せられて救急車の中に運び込まれていく。
「わかりました。東西病院、お願いします。これから搬送します」
「親族の方は同乗してください」
「でも、私ひとりしかいませんので」
「わかりました、では、奥さん、家の戸締りをすぐにしてください。落ち着いてくださいね」
「あ、あの、父さんはそろそろおむつを替えて上げなければ。寝た切りなもんで」
「おむつも救急車にありますから、家の戸締りだけを早くしてください。もう出ますよ」
「はい、わかりました。すぐに来ますので」
中年の女性は家に入り、すぐに鍵を閉めるなり救急車の乗りこむ。ドアが閉めらると「ピポピポ」という音とともに救急車は走り去って行く。
由紀はこの光景が頭から離れない。中間テストの最終日は音楽だ。小さい頃、ピアノを習っていたので、楽譜関係のテストには日頃の授業で問題ない。後は、歌のテストだ。ちょっと恥ずかしいけど、それなにりに歌える自身はある。明日の最終日の試験勉強はそこそこに由紀は瞑想にふけっていた。このところ、明け方までの勉強で睡眠不足が続いていたが、それも明日で終了だ。ましてや明日の試験勉強はあまり必要ないかろ思うと由紀は昨日の救急車で搬送されていった患者さんのことを思い出す。奥さんらしい人は確かに、患者の父さんがおむつをしていると言った。救急車の方は救急車の中にもおむつがあると言った。救急車も制限はあるにせよ一種の病院に近い施設とするとそれは正しいのかもしれない。だが、由紀には初めて知ったことだった。
そんなことを考えていると、由紀はあることを潜在的に考えるようになった。でも、そんなことになったら母はどう思うだろう、救急車の方は救護をしてくれるのだろうか、美恵はどう思うだろうなどと考えていると、とっくに時計は深夜の時間を示していた。明日の試験で終わりだだから、少しは睡眠をとろうと由紀は眠りに落ちて行った。

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